Eriko Ito

東京の、とあるソーシャルセクター(中間支援NPO)に勤めて約6年。期間限定でSeattleのNPOに参画後、帰国して出産しました。NPOスタッフが感じるあれこれを発信していきます。

コロナ禍におけるGrant Writing Support実施報告(1)

少し前になりますが2020年に行ったプロボノ活動として最も力を入れた「非営利組織に対するGrant Writing Support」活動について、実際にやってみて色々な知見が溜まったので備忘録がてらブログにまとめたいと思います。

最初にお断りしておきますが、私自身はファンドレイザーとしての資格も経験も全く無く、あくまで一介の非営利セクターの人間です。その為、プロのファンドレイザーの方から見て「それは違うんじゃないか」等のご意見もあるかもしれませんが、私自身が手を動かしてみて得た実感と知見をまとめておこうというのがこのブログの目的です。

また、いくつかお問い合わせいただいているのですが、Grant Writing Supportはあくまで私のコロナ禍におけるプロボノ活動のため、これを収益化し事業として実施する、もしくは恒常的なプロボノ活動とするつもりはありませんので、ご承知おきの上、ご覧ください。

 

【Grant Writing Supportを始めたきっかけ】

2020年、Covid-19により少しずつ、でも気が付いた時には急速に、私たちの生活に影響が及ぶ事態となっていました。忍び寄る緊急事態に対して、非営利セクターのリーダー達はこれまでの活動の知見を活かして一早く対応を開始、Facebook等でその活躍を拝見しながら、私自身はこの事態において何をすべきか考えあぐねていたのです。

Covid-19に対応しようと奔走するリーダーの様子を見て、「直接的に役に立てることは無いか。」そんな風にヤキモキしながら考えていた末に思いついたのがGrant Writing Supportでした。

Covid-19による社会的な影響の大きさが現れ始めた2020年3月~4月ごろから、民間財団による大型助成プログラムが相次いで開始されました。社会的弱者に対する活動を行っていた非営利組織リーダー達は、その助成プログラムにエントリーし、未曽有のこの事態に対応する資金を手に入れることが出来る訳ですが、当然ながらエントリーするための「申請書」の作成にはかなりの時間と労力を要します。また、申請先によって「書き方」の工夫が必要になること、また申請先によって項目が全く異なるためコピー&ペーストによって効率的に出すということも出来ません。

 

こうした事情により、リーダー達が動きたくても動けずにいる。そんな状況を目の当たりにし、ふと閃いたのが「申請書を書くサポートをすればよいのではないか」というとてもシンプルなアイディアでした。

前職のNPOで「助成金の申請書を見る」立場にあったこと、また現職のNPOの事務局長として「書類を書く」事には慣れている事、この二つはこの事態に生かせる私のスキルだと思い至ったのです。

ただ、また各団体にとって貴重な助成金申請の機会をファンドレイザーとしての経験も無い私が「やります!」という意欲だけで奪ってしまっていいのだろうか、全く助成金が取れなかったらサポート先のNPOに対して顔向けができない。

そんな不安があり、公開してサポート先を探すのではなく、フィッシュ・ファミリー財団(拠点:ボストン)が運営するJapanese Women Leadership Initiativeのプログラム卒業生が集まるクローズドコミュニティの中で趣旨に賛同いただけるNPOを募集し、支援を開始することにしました。(私も同プログラム卒業生で、コミュニティについて良く知っており、やりやすかったというのが理由としては大きいです。)

 

実施内容

細かく書くと大変なので…ざっくり以下の3点を行いました。

  1. 民間財団に申請する際のGrant Writing(申請書作成サポート)
  2. 行政等の補助金申請書記入サポート
  3. 税理士等の専門家との相談会の開催

このうち、今回は特に「1.民間財団に申請する際のGrant Writing」の実施における気づきについて書こうと思います。

実施結果報告(定量結果)

こうした活動は結果がどれぐらい出たのかもとても大事なので、先に報告するとコミュニティ全体で合計数千万円台前半の獲得金額となりました。このうち半分ぐらいが私が直接的にディレクションおよびライティングを行って獲得した金額、もう半分ぐらいがコミュニティメンバーの方々との連携により、場を設定したり、波及効果的にコミュニティメンバーが獲得した金額です。

※合計金額には民間助成財団以外にも行政からの補助金等も全て含みます。”申請さえすれば獲得できる”補助金もカウントしていますので「テクニックじゃなくない?」という見方もできるのですが、非営利組織のリーダーを良くご存知の方であれば「出せば獲得できる資金の申請書を書く暇もない、また書類を目の前にすると手がフリーズしてしまう」という状況の中で、その申請をサポートする存在の意義の高さはご理解いただけると思います。)

実施結果報告(支援を受けたリーダーからのコメント)

支援を行ったリーダー達からは以下のようなフィードバックを頂きました。活動を開始した時には想定していなかった「助成金申請のテクニック」以外のところでの貢献が大きかったことが明らかとなり、大きな発見でもありました。(改善点も教えてほしいとお願いしましたが、あまり聞けず。資金獲得の支援をしたのでネガティブな事は言わないだろうなというのは前提としてありますが。笑)

(プロジェクト・マネジメント面)

  • 新しいプロジェクトであり、放っておけば後回しになりかねないところを、先に進む後押しをしていただけた
  • プロジェクトマネジメントをしっかり行っていただけたこと(内容の精査から、進行管理まで・・・)

(事業計画面)

  • 詳細が詰められていない部分について、丁寧にヒアリングしてくださり、質疑応答を繰り返すなかで、計画を詳細化していくことができた

(仲間づくり)

  • 丁寧にヒアリングしていただき財団に対する言語を一緒に作る中で、自分たちのほかの場面でのプレゼンもブラッシュアップされ、仲間が増えた

(精神的安心感)

  • NPOのことも財団のこともわかっている共通言語を持つ方が、緊急時に伴走してくださることは、物理的および心理的な大きなサポートにもなると感じた。 
  • 何より、伴走していただけている安心感が大きかったです。

助成金申請の知識面)

  • 助成金の作法について教えていただけたこと(お金の見積もり方、入れたほうがよいワード、根回しなど)
  • 申請書を書く以前にどの助成金に申請するとフィットするかあたりをつけた上で、お話を進められたこと

(総括的コメント)

  • このような存在が団体に伴走してることでの社会への波及効果ある。誰かに伴走してる人の伴走者がいることは、どこかで孤立がうまれるのも防ぐしエンパワメントが連鎖してくなとも思う。

 

 

…なんだかどんどん長くなってきているので、二回に分けます。。。

erikokawaguchi.hatenablog.com