今さら聞けない休眠預金あれこれ(基本編)
明けましておめでとうございます。
あっという間に2019年…。昨年は、Seattleから帰国・結婚・出産と重大ライフイベントが連続した一年で、特に産後は正直あまり記憶がありません。(笑)
さて、某お正月番組で某アイドルが「2019年って、オリパラがある2020年の前座の年っぽい」と発言していましたが(笑)
2019年、ソーシャル・セクターにとっては大事な年ですよね!そう、休眠預金を活用した助成がいよいよスタートします!(それ以外にも色々トピックはあるけど笑)
…が、私、日本を離れていた+出産・育休で社会と隔絶された生活を送っていた関係で、休眠預金関連の話題は正直「あれ、これってどうなんだっけ?」と思う事もあったんです。
そしてあまりにも基本的すぎて、一番聞きやすい相手&休眠預金関連の最新トピックにも詳しい夫氏にも今更聞けない。。笑(いや、教えてくれるとは思うけども、、)
あと、地域活性に関わる知り合いと休眠預金関連の話になっても「よー分からん!」もしくは「え?あの話、もっと先じゃないんですか?」みたいな感じになっていて、
東京・大阪・名古屋あたりの大都市圏で情報が止まっているような印象を受けたんです。
こ、、これはもったいない…休眠預金、イノベーティブな取り組みをしている地域の団体にとって、とてもチャンスな話なのに…
…ということで、あまりにも基本的すぎて今更聞けなかったので(笑)、自分で調べてみた内容をせっかくなのでブログにまとめてみました。出来たら、「休眠預金、活用したいな~」と思っている地域の団体にも届いて、何かしらの準備を始めるきっかけになったら嬉しいなぁと思います。
ちょっと長くなりそうなので
(1)今さら聞けない休眠預金あれこれ(基本編)
(2)今、どこまで進んでるの?スケジュール関連
(3)今から何を準備したらいい?休眠預金と社会的インパクト評価
の3本立てでまとめていきます。(まとまるかな…)
そもそも休眠預金って?
正式名称は「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」といい、通称「休眠預金等活用法」と呼ばれています。
タンスの中に忘れられている通帳や少額しか入っていない口座など、何年も使われていない口座に入っているお金はこれまで「一定期間が過ぎたら銀行の雑益にしてよい」とされてきました。つまり、銀行の利益になってきた訳です。
それに対して諸外国では、
2003年 アイルランドで「休眠預金基金」が設立。2005年に法改正により運用スタート
2008年 韓国で休眠預金管理財団(微笑金融中央財団)による活用スタート
2012年 英国でBig Society Capital Ltd.が営業を開始し、活動が本格化
といったように先行して休眠預金が社会的事業に活用されています。(制度設計・運用方法等、日本の休眠預金とは異なる点もあります。)
こうした「忘れられている資金」を社会的事業に生かそう!というのが休眠預金です。(ざっくりすぎる?)
休眠預金等活用法の全体図
休眠預金の資金の流れは以下の通りです。
※公益団体には、NPO法人、一般社団法人、ソーシャルベンチャーなど多様なソーシャルセクターの場合がありえます。※
助成を受けようと思う人たちに直接関係ある所でいくと…
【1】指定活用団体:全国で1つの団体のみ。休眠預金の助成・貸付等の方向性全体を考える。
”「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」に基づく指定活用団体 公募要領”には、指定活用団体の役割を下記のように記載しています。
- 資金分配団体に対し、助成等の実施に必要な資金について助成又は貸付けを行うこと。
- 民間公益活動を行う団体に対し、民間公益活動の実施に必要な資金の貸付けを行うこと。
- 休眠預金等交付金の受入れを行うこと。
- 民間公益活動の促進に関する調査及び研究を行うこと。
- 民間公益活動の促進に資するための啓発活動及び広報活動を行うこと。
- 前各号に掲げる業務に附帯する業務
また”休眠預⾦等交付⾦に係る資⾦の活⽤に関する基本⽅針≪概要≫”には、
① 資⾦分配団体の選定等
- 「優先的に解決すべき社会の諸課題」の把握・分析及び決定。
③ 資⾦分配団体に対する監督
- 指定活⽤団体は、資⾦分配団体に対して、報告徴収、⽴⼊検査及び不正があった場合における選定の取消し、資⾦の返還等の必要かつ適切な監督を実施。
とも記載されており、
・休眠預金基金を使用して解決すべき社会課題の分野の決定
・資金の大元の管理、資金分配団体への分配および監督
が大きな役割と言えます。
また、
② 資⾦分配団体に対する助成等
- 指定活⽤団体が⾏う資⾦提供は、当分の間は、資⾦分配団体への助成のみとする。これをもって資⾦分配団体が⺠間公益活動を⾏う団体に対して助成、貸付け⼜は出資を実施することにより、資⾦分配団体等を育成しつつ本制度を確⽴させることを優先。
と記されている通り、当面の間は、「資金分配団体」が現場のNPO・ソーシャルベンチャー等に対して助成を行う、という流れになるため、休眠預金基金を活用した助成プログラムを創設したい財団などはこの「資金分配団体」に採択される必要があります。
【2】資金分配団体:指定管理団体が考案した助成・貸付の方向性を基づいた助成プログラム等を考える。
前述の通り、休眠預金を活用した助成プログラムを行うには、この指定活用団体に採択される必要があります。
この資金分配団体に期待される役割、最初に基本方針を見た時に面白いなと思いました。
例えば、
資金分配団体は、民間公益活動を行う団体に対して資金支援を行うという法で規定された役割にとどまらず、
革新的な手法による資金の助成、貸付け又は出資や事業実施に係る経営支援や人材支援といった非資金的支援を必要に応じ伴走型で行うこと等を通じ、
民間公益活動の自立した担い手を育成する中心的な役割を担うことが期待される。
と書かれている上記の役割に加えて、
社会の諸課題は地域や分野ごとに様々であり、民間公益活動を行う団体が行う解決のための手法も多種多様であることから、休眠預金等に係る資金の活用に当たっては、
特定の社会の諸課題の分野や地域の実情等に精通した資金分配団体を経由することにより、
民間公益活動を行う団体に対し適切に必要な支援が行われることが期待される。
という風に、「地域や分野によって社会課題も、その解決に有効な手段も様々」なため、現地の状況をよく分かっている資金分配団体の目利き力に期待してるよ、と明記されているのです。
東京の中間支援NPOに約6~7年務め、日本全国で活躍する数多くの中間支援NPOとお仕事をご一緒してきた経験から、彼らの
- 現場の課題をキャッチアップする力
- 実効性の高い活動を行う現場のNPOと協働する力
- 我が地域の課題解決に適した手法を見抜く力
等は、多様な課題が解決されていく、とても重要な力だなと感じていました。
長くなるので別途記載しますが、今回は政府はあくまで「監視役」という位置づけとなっており、民間の視点を生かして本当に必要な課題に対して助成プログラムを組める可能性がある仕立てになっています。
そのため、この資金分配団体がどう動けるか、どのような助成プログラムを創れるかは、休眠預金基金の成果に大きく関係するところだと思います。
(でも、大都市圏もしくは他地域とネットワークがある財団は着々と準備を進めている印象がありますが、地域の財団とかはあまり休眠預金の話題をフォローしていないように感じるんですよね。。)
【3】民間公益活動を行う団体:資金分配団体が実施する助成プログラムにエントリーし、その資金を活用して社会課題解決のための活動を行う
「民間公益活動を行う団体」って、長くて一瞬、何だかよく分からなくなるのですが(私だけ?笑)、要は実際に活動を行うNPOや一般社団法人などのことを指します。(ソーシャル・ベンチャーなども入ります)
よく「NPO法人だけ」と思われているのですが、「公益的な活動を行っている株式会社」等の法人格もOKです。
基本方針には以下の6つが掲げられています。
- 行政の縦割りに「横串」を刺す、あるいは公的制度のいわゆる「狭間」に位置している具体的な社会の諸課題を抽出し、可視化する。
- 成果に着目しつつ休眠預金等に係る資金を効果的・効率的に活用し、社会の諸課題の解決に向けた取組を推進する。
- 民間の創意・工夫を十分に活かし、複雑化・高度化した社会の諸課題を解決するための革新的な手法を開発し、実践する。
- 自ら行う民間公益活動の成果評価を実施し、民間公益活動の見直しや人材等の資源配分への反映等、民間公益活動のマネジメントの中で評価を有効に活用する。
- 現場のニーズや提案、事業成果等を指定活用団体や資金分配団体にフィードバックすることにより、本制度の一層の改善につなげる。
休眠預金関連で資料を読んでいて面白いなと思ったのは、「公的制度にはカバーできない「狭間」の課題解決をNPO等が担っている」ということが明記されていること、そしてそれが繰り返し使われていること。
また、「評価を行うこと」が要件に入っていることです。
私の専門は社会的インパクト評価なのですが、この評価が要件に入ったことは画期的なことだと思います。
そして、ソーシャル・セクターの現場で活躍されている方々も委員に入って作った制度ということもあって、この「評価」の捉え方がとっても本質的なものになっています。
「事業が成功したか、失敗したのか」という通信簿のように他者から「評価を下される」ものではなく、
「評価を行い、それを次の事業に生かしていくこと。」という「事業を成長させ、より大きな社会的インパクトを生み出すためのもの」という位置づけが想定されているからです。
しかしながら、基本方針では、「評価」は現場のNPO等が実施することとなっています。
指定活用団体・資金分配団体に評価の方針を示す事やプログラムの要件に組み込むことを求めてはいますが、実際の役割の範囲としては「NPO」側なんです。
もちろん、評価の専門機関に出すことだけではなく、「自己評価」もOKとされていますが、正直、現場のNPOにとって「評価」の負担は結構大きいのではないかと。(私自身がNPOに居たため、その感覚からいうと結構大変。)
…という訳でいきなり番宣です(笑)
社会的インパクト評価の基礎から実践までが2日間でわかる研修のお知らせ
●社会的インパクト・マネジメント・トレーニング「Maximizing Social Value」
私が所属する特定非営利活動法人ソーシャルバリュージャパンでは、加盟組織である英国Social Value Internationalによって作成されたトレーニング教材を日本語化し、2019年1月15日(火)ー16日(水)の2日間にわたり、社会的インパクト・マネジメントについてのトレーニングを実施いたします。
今回開催する「Maximizing Social Value」トレーニングは、これまで実施してきたSROIトレーニングを発展させ、これから社会的価値の評価やマネジメントに取り組もうとする非営利組織・企業CSR・助成財団・中間支援組織等の方々を対象に、より広範な社会的価値の最大化のためのマネジメント・フレームワークについて、研修を行うものです。
「社会的インパクト評価とは?」という基礎から、「休眠預金基金が始まったら、どう評価を行えばいいのか」といった実践まで2日間で学べます。
「休眠預金関連に今後、関わることになりそう」という方や「社会的インパクト評価について学んでおきたい」という方など、休眠預金スタートに向けて準備をしたい方にオススメの研修です。
ぜひご参加いただければと思います。
【日 時】
2019年1月15日(火)9:30~17:00、16日(水)9:30~17:00(全2日間)
※終了時間は進み具合により1時間ほど前後する可能性があります。
【会 場】
都内会議室(詳細はお申込みの方にお知らせ致します)
【内 容】
研修では、以下のような内容を扱う予定です。
・社会的価値の7原則
・社会的価値マネジメントの5つのステージ
・アウトカムの定義
・データ収集の対象と方法
・質的リサーチ
・データからの学び
・財務係数の活用
【参加費】
75,000円(消費税込)
【定 員】
15名
(定員に達し次第締め切らせていただきます:最少開催人数10名)
【対 象】
・非営利組織・企業CSR・助成財団・中間支援組織等において、組織全体の社会的価値の最大化やインパクト・マネジメントの深化を図りたいマネジメント層の方
・上記の団体等において、ご自身のプロジェクトの社会的価値・インパクトの最大化の方法について学びたいプロジェクト・マネージャー、スタッフの方
【使用言語】
日本語
【お申込み・詳細はこちら】
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思った以上に長くなったため、記事を分けようと思います。。
次回は、「休眠預金の話って今、どこまで進んでいるの?」、「休眠預金って何が革新的なの?」、「休眠預金のパブリックコメントを紐解いてみよう!」といった話を書こうと思います。
1月5日(土)に池上彰さんが出演するテレビ番組でも休眠預金の話題が取り上げられるようです。恐らく「国民の預金が、福祉の予算に使われる」という内容になるのでは?と思いますが、どんな構成になっているのか楽しみです。(忘れずに見ないと!)
※私もこの話題については諸先輩方に色々お話しをお伺いしながら学んでいるところです。特に法制定の趣旨などについて「それはちょっと違うんじゃない?」等のご意見等がありましたら、ぜひご指摘いただけたら幸いです。